キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 声をひっくり返らせながら、私はパニック状態で宙斗くんに尋ねる。宙斗くんはどこか切羽詰まったような様子で、ズイッと顔を近づけてきた。

「もう限界、本当は一緒に寝たあの日に歯止めが効かなくなりそうだったんだ。よく今日まで耐えたな、俺、超偉いわ」

「待って、待って! なんの話!?」

 たぶん、いや一緒に寝た日って旅行のときの話だよね。ということはあのとき、宙斗くんはやましいことを……。

 それがどんなことなのかを想像したら、顔から火が出そうになった。

「出た、飛鳥の鈍感発言」

「鈍感って、私が?」

 そういえばよく言われるな、それ。覚えてる限りだと、宙斗くんと楓には何度か言われた気がする。

「日本に鈍感は逮捕される法律とか、できねぇかな」

 宙斗くんは至って真顔で、疲労感を含ませながら切実に言う。

「なにそれ! 宙斗くんは私が牢屋入りしちゃってもいいの!?」

「大丈夫だ、俺が看守をやればずっと一緒にいられる」

「え、罪状は終身刑ですか?」

 ――って、私たちはなんの話をしてるんだ……。

 宙斗くんとの距離にドキドキしすぎて、頭がうまく回転しないみたいだ。熱に浮かされているみたいに蕩けきっている頭を、君の言葉が再び火にかける。

「というわけで飛鳥、キスしたい」

「はうっ」

    

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