キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 美代はなにかと女の勘が働く。たとえば、クラスメートの誰に彼女だできたとか、自分の彼氏の浮気とかを瞬時に察知する能力がある。

 美代エスパーを前にして、私はどこまで嘘をつき通せるのか……。もうすでに自信がない。もっとうまくごまかさないと、すぐに見抜かれてしまうだろう。

 内心ヒヤヒヤしながら、私は意を決して楓と教室に入った。その瞬間、目の前が陰った。

「はや――飛鳥」

「わあっ!」

 教室の入り口を塞ぐように仁王立ちするのは、真っ青な顔をした宙斗くんだ。

「えっ、宙斗くん!?」

 どうして、そんな今にも死にそうな顔してるの?

 目を丸くしていると、宙斗くんのうしろから「彼女ができたってどういうこと!?」「私たちの王子様がぁーっ」という混乱と悲鳴が巻き起こっている。

 ああ、宙斗くん。質問攻めにあったんだな。

 私も当事者なのに、どこか他人事のように気の毒になった。

「飛鳥」

 名前を呼ばれて、トクンッと心臓が跳ねる。

 ドキドキしてる場合じゃないのに、私……。やっぱり宙斗くんに名前を呼ばれるの、好きだな。もう少しだけ、この幸せの余韻に浸っていたいところだけど、宙斗くんが〝早く助けて〟って顔をしてるからなんとかしてあげないと。

「見ての通り、〝私の彼氏〟が体調悪そうなので、保健室に送ってきまーす!」

    

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