キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 私はスルリとリボンを解いて、彼に差し出す。その意図がわかったのか、渋々握ってくれた。

「は? なにやっての、飛鳥」

 楓はポカンとした顔で、私たちの手元を凝視する。そりゃそうだよね、いきなりリボン握り合ってるんだから。

 さあ、理由を考えろ飛鳥! 私の頭の回転に偽装カップルの未来がかかってるんだから。

「えっとね、人前で手を繋ぐのが恥ずかしいから、こうしてリボン越しに手を繋ごうって話になったの」

 うわー、我ながらなんて無理やりな嘘。こんなの信じる人はいないと思うけど、とりあえずなにか言わなきゃいけない状況だったわけで――って、もういいから逃げよう!

「宙斗くん、行こう!」

「え……」

 宙斗くんの顔に、何度目かわからない【不快】の二文字が浮かぶ。

 きみが助けてほしそうにしたんじゃないか! いや、そんなことはこの際どうでもいい。

「楓、ホームルームまでに私たちが戻ってこなかったら、うまーく東堂先生のことごまかしといて!」

「え、おい!」

 楓の制止も聞かずに、私はリボンを引っ張って廊下を走る。振り返らなくてもリボンが引っ張られる感覚があるから、宙斗くんがついて来てくれていることがわかった。

    

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