キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 授業中でも、みんなの好奇の視線が飛んでくる。いつも授業に真剣に参加してるわけじゃないけど、集中できない。

「はぁ……」

 教科書で顔を隠し、思わずため息をついた。すると隣の席に座る楓が、ちらりとこちらを見る。

「生きてるかー?」

 小声でそう声をかけてきた。

 私は両手を合わせて目を閉じ、天に召されたジェスチャーで返す。

「ぶっ」

 吹きだした楓をジトリと睨み、口パクで〝笑うな〟と伝えた。楓といがみ合っていると、今度は私の前の席に座る美代が先生の目を盗んで振り返る。

 美代、どうしたの?

 そう目で訴えかけると、スッとりんごの形をしたメモ用紙を私の机の上に置く。もう一度どうしたのかと聞こうと思ったのだが、美代は前を向いてしまった。

 なになに……?

 メモ用紙を手に、文面に目を走らせる。そこには【ふたり、付き合ってないでしょ】と書かれていた。

……え、ええっ!?

 口をパクパクさせながら、私は目の前の物言わぬ背中を穴が開くほど見つめる。

「なっ、なんでわかったの!?」

 ガタンッと席を立ちあがり、叫ぶ私。あっ……と、気づいたときには遅かった。

「おーい早見、今はなんの時間だー?」

「はい、今は東堂先生の貴重な数学のご講義の時間です! すいませんでしたっ」

 もう、私ってば焦りすぎっ。

    

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