キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 ペコペコと頭を下げて謝ると、ワッとクラスに笑いがわく。先生は本気で怒っているわけではなく、苦笑いしながら口を開く。

「仕方ないな、今回は許す!」

「ありがたき幸せ!」

 またクラスに笑いが巻き起こる中、ふと視線を感じた。顔を上げたら、宙斗くんとバッチリと目が合う。

 あれ、なんか言ってる?

 動く彼の唇に目を凝らすと、口パクで「バカ」とふた言。

「バカ!?」

 つい声に出してしまう私に、宙斗くんは口元をおさえて小刻みに肩を震わせる。

 あっ、宙斗くんが笑ってる! 

 彼の笑顔を見るのは、初めてだった。きみの仏頂面か怯えた顔以外の表情が見られるなら、恥をかいたかいがあるなぁ、なんて思ってしまった。

「はーやーみー」

「あ……ほんっとーに、すみませんでした!」

 また私、叫んじゃったんだ。

 恥ずかしくなって、すぐさま着席する。両手で火照る頬をパタパタと扇いでいると、美代がまたもやこちらを振り返った。

「わかりやすいわね、飛鳥は」

「やだなぁ美代、なっ、なんのことかなぁ?」

 美代の見透かすような視線から、私は目を逸らして笑う。

 絶対、美代にはバレてる。こんな調子で大丈夫なのか、先行きはもちろん不安だけど宙斗くんの笑顔が見れたし、悪いことばかりじゃないよね。

 ――というわけで、これは証拠隠滅しないと。

    

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