キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。

　頭に手を当てて、きょとんとしてしまう。
そんな私の前にリボンを手にした男子生徒が現れて、からかうように言った。

「お前、ぼーっとしすぎだろ！」

「ちょっ、返してよ！」

「じゃあ、取ってみれば〜」

「はい！？」

　そばに行こうとしたら、男子はなぜかリボンをチラつかせつつ、教室の中を逃げ回る。

　小学生かっ。
心の中でツッコミを入れながら、私は男子を追いかけたのだが……。

「あ」

　ちょうど、窓際を走っているときだった。
間抜けな声を出した男子の手から、リボンが離れる。ひらひらと風に乗って向かう先は、開いた窓の外だった。

「あっ、だめっ！」

　とっさに窓に身を乗り出して、リボンを掴もうとした。 でも、すんでのところで手は届かず、リボンは教室のある二階から地面へと落ちていってしまう。

「うそっ……拾いに行かなきゃ！」

　すぐに踵を返そうとすると、ツイていないことに授業開始の予冷が鳴った。

　もう、タイミング悪すぎるよ……。
どうしてこんなときに、予鈴が鳴っちゃうの！

　私は絶望的な気持ちで、その場に立ち尽くす。

「な、なんか悪いな」

　リボンを盗った男子が、笑みを浮かべながらも申し訳なさそうにそう言った。

教室がシンと静まり返ってしまい、空気を悪くしてしまったと思った私は泣きたい気持ちを胸の奥に押し込めて笑顔を繕う。

「もー、仕方ないなぁ。許してあげようじゃないか」