キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「え、これ……」

 宙斗くんが作品作りの参考にするからって取ったんじゃないの?

 テディベアを抱きしめながら問うように宙斗くんを見上げれば、フイッと視線をそらされる。

「この間のお礼」

「お礼?」

 私、なにかお礼されるようなことしたっけ?

 ぶっきらぼうにそう言った彼に、心当たりがなかった私は首を傾げる。

「ウサギとクマのキーホルダー、くれただろ」

「……ああ!」

 言われてやっと、思い出す。宙斗くんを可愛い雑貨屋さんで現行犯逮捕したときに、私がお詫びであげたキーホルダーのことだ。

「でもこれ、ぬいぐるみ作りの参考にするんじゃ……」

「そんなこと言ったか? 空耳だろう、うん」

「…………」

 まさか、まさかだけど……。私にお礼するために、このテディベアを取ってくれたとか?

 頭の中でまさかを何度も繰り返し唱えていると、頬が熱くなってくる。そうだったとしたら、今ここで死んでもいい。一生ぶんの幸せを使い果たしたから。

「あ、ありがとう宙斗くん! 大事にするね!」

 ギュッと強くテディベアを抱きしめれば、宙斗くんは「大げさだな」と言って小さく笑った。

    

< 58 / 178 >

この作品をシェア

pagetop