キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 見事に声が重なった。というのも、私たちの顔はオカマに口裂け女、地蔵というカオスな形で印刷されている。これを女子たちに見られたら、私たちがカップルだなんてとてもじゃないが思えないだろう。

「写真を撮るまではよかったと思うんだけど、どこから道を間違えちゃったんだろう」

「もっと真面目にやらねぇーと、まずいな……」

 私たちはふたりで肩を落とすと、反省してプリクラを静かに鞄に仕舞う。何事もなかったかのように、誰にも見られないうちにと証拠を隠ぺいした。

「宙斗くん、ごっ、ご飯でも食べに行こうか。そこで挽回しよう!」

「あ、あぁ……この隣にファミレスがあるし、そうするか」

 監視の目を気にしつつ、私たちはそそくさとゲームセンターの隣にあるファミレスへと移動した。

 席は人通りが見える窓際の席で、宙斗くんと向き合うように座る。そして宙斗くんのすぐうしろには、偵察隊の女子たちが陣取った。なんたる図々しさ、私なら絶対に真似出来ない。

 彼女たちの刺さるような視線を真っ向から受けながら、私はメニュー表を開いてぎこちなく宙斗くんに声をかける。

「な……なに食べる?」

「食欲がわかない」

 そりゃそうだ。だって彼の真うしろには、天敵の女子がわんさかいるのだから。きっと宙斗レーダーが鳴りっぱなしなんだろう。

「心中、お察ししますけど……。なにかお腹に入れないと、あとがもたなくなるよ?」

    

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