キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「はぁ、危なかった……」

「危なかったのは、俺のほうだ!」

 ホッと息をつく私に、宙斗くんが抗議してくる。

 いや、私としては感謝してほしいくらいだ。危うく、偽装カップルという事実が明るみに出るところだったんだから。

「ほら、今度は宙斗くんが私に食べさせて!」

「…………」

 彼は無言で“無理だ”と、顔で訴えかけてくる。それでも、私がうしろの女子たちの存在を目線で知らせれば、宙斗くんは渋々と言った様子でスプーンを手に取った。

「いくぞ、飛鳥」

「あっ……」

 不意打ちで名前を呼ばれて、トクンッと心臓が跳ねた。

 宙斗くんは「お前」呼びばっかりで、私の名前はさっぱり呼んでくれなかった。だからこうして、突然名前を呼ばれると耐性が出来てないから焦る。

「熱いから、気をつけろよ」

「んっ!」

 半開きの私の口の中に、宙斗くんが優しくトマトリゾットを入れてくれる。だけど、宙斗くんから「あーん」をされるという衝撃に、味はよくわからなかった。

「これでいいのかよ?」

「う、うんっ。おいしかった!」

    

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