キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 宙斗くん、どっと疲れたって顔してる。私もおいしかったなんて言ったけど、本当は味なんてわからなかった。でも宙斗くんからもらったものだから、おいしさも倍増していたに違いない。

「俺が作ったわけじゃないけどな」

「宙斗くんが食べさせてくれたら、どんなものだっておいしくなるんだよ」

「なっ……」

 素直に思ったままを伝えたら宙斗くんは片手で口元を覆い、勢いよく窓のほうを向いてしまった。

 あ……また、不快な思いをさせちゃったかな。私がどんなにきみを想って言った言葉も、きみにとってはすべてが迷惑にしかならないんだろう。

 その事実が、こんなにも切ない──。

「はぁ、なんなんだよ、もう……」

「宙斗くん……」

 髪を掻き回しながら、頭を抱えるように俯く宙斗くんに胸がチクリと痛む。

 とにかく、私ができることは自分の気持ちを押しつけることじゃない。せっかくのデートなんだし、宙斗くんが楽しめないんじゃもったいないから……。

 よし、決めた。私、偵察隊を撒く! 大好きな人に楽しい時間をプレゼントして、願わくば女の子に……ううん、私に少しでも慣れてもらえるとうれしい。

 世界には宙斗くんを傷つけるような女の子だけじゃない。心からきみを想ってくれる人もいるんだってことを知って欲しい。そのために、きみをっこから連れ出そう。

 私は頭の中で密かに作戦を立てて、力を蓄えるようにハンバーグを頬張った。

    

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