キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「ん、じゃあ次はどうする?」

 彼は満足げに笑って、何事もなかったかのように青空を見上げる。

 あ……また笑った。

 宙斗くんのレアな笑顔、最近はちょくちょく見れて女の子に慣れてもらう作戦に手応えを感じている。よし、ここからは私の恩返しの時間だ。

「宙斗くん、走りに自信はある?」

「……は? なんだよ、急に」

「リボン掴んで、これから逃走するから」

 私がリボンを差し出すと、条件反射なのか宙斗くんはそれを掴んだ。私は呆気に取られている彼を、そのまま引っ張って走り出す。うしろで偵察隊の女子たちが「ちょっと!」と声を上げて、私たちを追いかけようとしているのが見えたけれど立ち止まらなかった。

「おいっ、飛鳥!?」

「足を止めないで、走って!」

 急に走り出した私の名前を、戸惑うように呼ぶ宙斗くん。

「もう十分監視されたし、あとは自由にデートしようよ!」

 振り返りながらペロッと舌を出してイタズラに笑えば、彼は目を見張る。その頬が少しだけ赤く染まっているように見えたのが気のせいじゃないといい、そう思った。

 どれだけ走っただろう。なんとか女子たちを撒いた私たちは、息を切らしながらショッピング通りをプラプラと歩く。

「はぁっ、疲れたー」

    

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