キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「お前、ちょっとそこのベンチに座れ」

 宙斗くんにリボンを引っ張られて、私はレンガ調の道の途中にあるベンチに座らされる。

「え、宙斗く──あれ?」

 不思議に思って彼を見上げると、すでにその場から遠ざかっていた。

 まさか……放置プレイでしょうか?

 デート相手の背中を見送りながら、私は血の気が引いていくのを感じた。いくら女の子が嫌いだからって、置いていくことはないじゃないか。ここからが本格的なデートの始まりだったのに、帰っちゃうとか辛すぎる。

 しばらく待ってみたけれど彼はやっぱり戻っては来ず、私はショックで目に涙を浮べながら俯く。

「そのまま帰っちゃうなんて、ひどい……。宙斗くんのバカ! オカマ野郎! イケメンの無駄づかい!」

「帰ってねーよ」

「ぎゃっ!」

 弾かれるように顔を上げると、そこに帰ったと思っていた本人が登場し、私は笑顔を引き攣らせながら尋ねる。

「あのぉー、今の全部聞かれてました?」

 そろりと宙斗くんの顔を見れば、それはもう真っ黒な笑みが返ってくる。

「言いたいことは腐るほどあるが、俺は女嫌いでもオカマじゃねぇーぞ、とだけは言っておく」

「ハイ、スミマセンでした」

    

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