キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 宙斗くんの手にあったのは、桜のアクセントがついた桃色のパンプス。宙斗くんは私の答えを聞くより先に左手で私の足を掬い、空いた右手でパンプスを履かせてくれる。

 その仕草がまるでガラスの靴を履かせる王子様のようで、舞い上がりそうになる。自分もお姫様になった気分で、ぼーっと彼の仕草に見惚れていた。

「ほら、立てるか?」

 そこで宙斗くんが、リボンではなく手を差し出したことに私は驚いた。

「え、宙斗くん……?」

 その手を見つめて言葉を失っていた私を、彼は不思議そうに見つめてくる。宙斗くんはなんで私が驚いているのか、気づいていないみたいだった。

「あの、手……」

「あ……俺、なんで……」

 私に言われてようやく気づいた様子の宙斗くんは、信じられないと言わんばかりに自分の手を凝視している。

「お前なら……大丈夫、なのか……?」

「え?」

「この手を、取ってみてくれないか」

 宙斗くんは、恐る恐るそう言った。私はゴクリと唾を飲み込んで頷くと、そっと手を重ねてみる。その瞬間、宙斗くんがビクリと震えたのが触れた手から伝わってきた。けれど、宙斗くんは手を放さなかった。

「わっ、すごい……宙斗くんすごいよ!」

    

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