キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「すぐに寝ると、豚になるぞ」

「……え、牛じゃなくて?」

 ボーッとしながらなんとかそう答えると、宙斗くんはニヤッと笑う。

「どっちでもいいだろ、太ることに変わりないんだから」

「なにそれ……ひどい」

 眠くさえなければ、もっとガツンと言ったのに。私は覇気なく文句を言って、欠伸をしながらいよいよ目を閉じてしまう。

「お前、髪長いんだな」

「んー、そうだよ。宙斗くんが早く手を繋げるようになってくれたら、私も髪を結べるのになぁー」

 目をつぶったまま、口元に笑みを浮かべて意地悪を言ってみる。散々、私をからかった仕返しだ。

「なんでだよ、他の髪留めで結べばいいだろ」

「……どうしても、宙斗くんとの思い出が詰まったこのリボンがいいの」

 私に恋のきっかけをくれたリボン。これ以外で髪を結ぶときは、きみが約束通り私に新しいリボンを作ってくれるか、失恋したときのどちらかと決めている。

「思い出って、なんだよ?」

「ふふっ、宙斗くんは覚えてないと思うけど、前にこのリボンを失くしちゃったことがあってね」

 手放しそうになる意識をなんとか繋ぎ止めて、ノロノロと口を動かす。

    

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