キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 こんなこと、きみの重荷にしかならないだろうから話すつもりなんてなかった。それでも話してしまうのは、きっと知ってほしかったから。私は顔でも容姿でもなく、きみのやさしさに恋をしたんだってことを。

「それを、宙斗くんが見つけてきてくれたんだよ」

「そうだったか? 全然、覚えてねぇ」

「そりゃそうだよ、宙斗くんは恩を着せるためにしたんじゃない。息をするみたいに当たり前に、人に優しく……できる人……だから……」

 恩を着せるためなら「あのとき、助けてやったのは俺だぞ」って言うはず。でもきみは人知れずに私の机にリボンを届けてくれて、あとで自分の手柄だと言うことはなかった。優しい人なんだ、誰よりも。

「そんな宙斗くんが、私は……」

「え?」

 どんどん緩慢になっていく口調でどこまで私の想いが伝わったのか、最後まで言葉になっていたのかはわからない。でも、なにかきみの心に残せたらいい。

 眠りの世界へと沈んでいく私の耳に「飛鳥」と切なげに名前を呼ぶ、彼の声が聞こえた気がした。

「ご飯食って、すぐ眠くなるとか子供かよ」

 屋上からの帰り道、隣を歩く宙斗くんに横目で睨まれる。確かに話し相手が寝ちゃったら、やることなくて退屈だよね。

    

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