キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 そんな声があちこちから聞こえてきて、教室がざわつき始めた。宙斗くんの顔から表情が消えていくのが分かり、冷や汗が背中を伝う。

 どうしよう、私がストラップなんかあげたから……。

 顔を真っ青にして、宙斗くんの顔を見上げたとき――。

「これは……こいつが押しつけてきたんだ!」

 宙斗くんは私を指さして、フンッと鼻を鳴らす。

「俺がこんなもん、好き好んで買うわけねぇだろ」

 宙斗くんの頬が、わずかに赤くなっている。恥ずかしくて、つい口をついてしまったんだと思う。

 わかってる、だけど……。好きな人に迷惑がられるって辛い。

 密かにズキズキと痛む胸、滲む涙。それらがバレてしまわないように、私は無理やり笑った。

「そう、私が押しつけちゃって」

 震える声をカバーするように声のトーンを高くして、ふたりの会話に割って入る。みんなの視線が自分に集まると、肩をすくめてみせた。

「宙斗くんは優しいから持っててくれたんだ。でもこの顔、愛くるしくない? あははっ」

 わざとらしいくらいに明るく振る舞えば、教室に笑いがわく。みんなからは「そんなんじゃ、彼氏に逃げられるぞ」とからかわれた。

「なーんだ、そういうことかよ」

    

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