キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 男子も納得した様子で、スマートフォンを宙斗くんに返すと席に戻っていく。クラスメートも興味を失った様子で、近くにいる友達との会話に花を咲かせ始めた。

「お前……」

 嵐が過ぎ去ったあと、宙斗くんは私の顔を見て目を見張る。

 もしかして、泣きそうなのバレた? だとしても、うまく誤魔化さないと。

 私は口角を無理くり引き上げて、笑みを作る。

「宙斗くん、またあとでね」

「あ……」

 なにか言いたげに口を開いた宙斗くんに、クルリと背を向けて自分の席へと戻る。席について、気持ちを落ち着けるように「ふう」と息をついていると、隣に座っていた楓が体をこちらに向けた。

「こっぴどくフラれたな」

「ちょっと、フラれてはないから」

 反論すると素知らぬ顔で楓が机に頬杖をつき、私をじっと見つめて言った。

「お前さ、なんであんなのがいいわけ?」

「へ、え?」

 なんで、と言われましても。

 やや不機嫌気味に尋ねられて、私は困惑する。楓がどうして、そんなに怒っているのかがわからない。

「私の好きな人を、あんなの呼ばわりはやめてよね」

 悩んだ末に軽口っぽく返して、このまま話題を変えようとした。

「茶化すなし、本当は傷ついてんだろ」

 なのに、やけに踏み込んでくる楓に、必死に隠そうとしていたものを暴かれた気分だった。私の心の内は、親友の彼には絶対にバレている。

    

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