キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 なら、もう我慢しなくてもいいかな。なんて、一瞬でも思ってしまったのがいけなかったのかもしれない。

「飛鳥……」

 目を丸くする楓に「え?」と、自分でも驚くくらいか細い声が出た。そこで視界が歪んでいることに気づき、頬に触れればしっとり濡れていることに気づく。

 あぁ、私……泣いてたんだ。

「や、やだっ」

 慌てて涙を拭って笑おうとしたら、唐突に席を立った楓がポンッと私の頭に手を乗せてくる。

「無理して笑うな。飛鳥のくせに、かっこつけすぎ」

「ご、ごめん……」

 なんでもお見通しだとわかったからか、私は強がるのをやめた。みんなから見えないように、私の前に立ってくれている楓に甘えてこっそりと泣く。

「おはよう、ふたりとも」

 そこに部活の朝の練習を終えた美代がやってきた。席にスクールバックを置くと、泣き腫らした私の顔と不機嫌な楓の顔を見比べて目を瞬かせる。

「なにかあったの?」

 椅子を私の席のほうに向けて座り、そう声をかけてきた。

 やっぱり親友、恐るべし。強がって明るく振る舞っても、ふたりは私の異変にすぐに気づいて簡単に見破ってしまう。だから私は、素直になれるのかもしれない。

「うん、実はね……」

    

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