キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「だから飛鳥、宙斗くんの見せた表情とか、言葉とか、それだけで判断しないように」

 美代は私の肩に軽く手を乗せると、その目を細めて優しく笑う。

「美代……」

「男の子は強がりな生き物なの。だから、別に飛鳥が嫌いで言ったんじゃないと思う」

 美代に言われると、妙に説得力がある。私は少しだけ胸が軽くなって、素直に首を縦に振った。

「うん、ありがとう美代」

「いい子ね。たくさん傷ついて、どんどん女の子を磨きなさいな」

 よしよしと頭を撫でられている私を見て、楓は苦笑いする。

「美代って、本当に十七歳?」

 楓……うんうん、私も同意見だよ。

 乾いた笑みを浮かべていると、楓がツンツンと服の袖を引っ張ってきた。

「おーおー、彼氏サマがこっち睨んでるぞ」

 楓が私の制服を掴みながら、ニヤニヤする。

「え?」

 彼氏サマって、宙斗くんのことだよね?

 私は恐る恐る教室の入り口の近くにある席へ視線を向ける。

「あっ……」

 宙斗くんの黒曜石のような瞳と目が合う。あっちも私の視線に気づいたようで、その顔を強張らせた。

 そうだよね、私と目が合うなんて不快だよね。

 親友ふたりのおかげで上がりかけた気分が再び急降下していくのを感じながら、無粋にも見つめてしまったことを後悔していると……。

「ここは俺の出番だよな」

    

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