キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 いつも飄々としている彼らしくない。挑戦的に宙斗くんを見る楓は、唇に笑みをたたえながらも怒っていた。

「どうして、俺が慰めてたと思う?」

「それは……」

 楓の質問に、宙斗くんは口をつぐんだ。でも思い当たる節があるのか、苦虫を噛み潰したような顔で視線を彷徨わせている。

「こら楓、あんまり宙斗くんをイジメないの」

 そこに美代が助け舟を出してくれる。楓の腕も自然と解かれて、私はホッと息をついた。

「……あなたたちの事情は、なんとなく察してるわ」

 美代の言葉に、ハッとした顔をする宙斗くん。私たちが偽装カップルだとわかっているような美代の口ぶりに、宙斗くんは咎めるような視線を私に向ける。

「お前、話したのか」

 話したのかって、偽装カップルのことだよね。うまく立ち回れたとは言えないけど、親友のふたりにだって黙ってたのに……。疑われるなんて、私はきっと信用がないんだな。

 好きな人に信じてもらえていないことを再確認して落ち込んでいると、美代が「ふうっ」と息を吐く。それから射貫くように、宙斗くんを見据えた。

「この子が、そんなことするように見える?」

「それは……」

「宙斗くんなら、わかってるでしょう?」

 諭すような美代の言葉に、バツの悪そう顔をする宙斗くん。そんな彼をチラリと見た美代は、続けて口を開く。

    

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