キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「本心では違うと思っていても、口から出た言葉は真実になってしまう。だから、飛鳥を失いたくないなら、優しくしたいなら、なんの役にも立たないプライドは捨てることね」

 そう言って美代は、私にだけわかるようにウインクをすると自分の席についてしまう。

「あんまし泣かすと、俺も本気出すからな」

 楓は謎の言葉を残して私の隣の席に座ると、他の生徒たちと談笑を始めてしまった。

残された私たちはお互いにどんな言葉をかければいいのかがわからず、立ち尽くす。なんとなく気まずくて、視線も床に落ちたままだ。だから、宙斗くんがどんな顔をしているのかもわからない。

 そして結局、ひと言も話せないまま授業の開始のチャイムが鳴ってしまい、私たちは自分の席に戻るしかなかった。

 放課後、あれだけ晴れていた空は分厚い灰色の雲に覆われてしまっていた。授業中に降るな降るなと願っていたのがかえってよくなかったのか、雨がザーザーと地面を打ち付けている。

 最悪、朝は晴れてたから傘なんてもってきてないよ。

 委員会があったので楓は先に帰ってるし、美代も部活だ。ふたりが傘を持っていたとしても、一緒には帰れない。

「はぁ、ついてないなぁ」

 今日は特にそう思う。最近はうまくやれたたのに、宙斗くんとギスギスしちゃうし……。

    

< 87 / 178 >

この作品をシェア

pagetop