キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 そこまで言いかけて、宙斗くんは言葉を飲み込む。考え込むように視線を足元に落とすと、意を決したように顔を上げた。

「いや、お前を待ってた」

「えっ……私を?」

「傘、ないなら入れてやる」

 淡々と話しながら、宙斗くんはスクールバックからら紺色の折り畳み傘を取り出す。

 あれ、意外……。宙斗くんなら、水玉模様の可愛い傘とか使ってそうなのに。

 そんなことを考えながら傘をじっと見つめていると、私の視線に気づいた宙斗くんは怪訝そうな顔をした。

「なんだよ」

「えっとね、宙斗くんらしくない傘だなって」

「は?」

「もっと可愛いやつを想像してたの」

「さすがに、学校で堂々と使えないだろ」

 まあ、それは確かにそうかも、キーホルダーのときも取り乱してたし……。

 あのときのことを思い出して、心に影が落ちる。

 いかんいかん、暗くなったってしょうがないって。宙斗くんにも気にしちゃうだろうし、ここはいつも通り接しよう。

「ってことは宙斗くん、可愛い傘も持ってるの?」

「……ウサギ柄の……が、ある」

 もごもごと答える宙斗くんに、ついクスッと笑ってっしまった。

 背も高くてかっこよくて普段はクールなのに、なんでかな。可愛いって思っちゃう。

 ウサギ柄の折り畳み傘を使っている彼の姿を想像してニヤケる私を、彼は恨めしそうに見る。

「その顔をなんとかしろ」

    

< 89 / 178 >

この作品をシェア

pagetop