*SOUZI*
稽古着姿の沖田を見て
「稽古前にすみません」

「まだ早いから、気にするな」

沖田が微笑む

遠慮がちに近づくと
沖田の胸元にすがる


「残された命が、わずかだと知った時
刀を修復しようと決めました
刀が修復出来て、まだ命があったから
新選組の女中として、沖田さんのそばに
ただそばにいたいと思いました」


わずかな命と聞き
沖田が光の顔を見ようとする
ストンと膝の力がなくなり、座り込む光を支えるように座る


「私は… どんなに逃げても
家定の娘なんです…
新選組にいれば、ただの女中でいられたのに
沖田さんの腕の中では、ただの女なのに
私が…家定の娘であることが
こんなに色々な人を振り回すなんて
もう嫌です
家定の娘でなければ、沖田さんのお嫁さんになって、子供を産んで…
とても幸せだったはずなのに…」

沖田が光の背中をぐっと抱き寄せた


「でも…
沖田さんの腕の中で逝けるなら
私は… 幸せ者ですね」




「縁起でもねぇ事言うな」



鼻をつまみ顔を見て、固まった


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