*SOUZI*
門限のない夜


すぐそこの屯所に戻るのも勿体なく感じ

少し夜風にあたりながら散歩しようと
屯所とは、別の方向へ



「ケホケホ」

風邪の引き始めだろう

軽く考え、歩く


「ケホケホゲホッゴホッ」

繰り返し出る咳に立ち止まる

「あの、もし?」

女の声に、無視を決め込もうとするが

「ゲホッケホゴホッ」

咳が止まらず、背中を擦られる

「君、僕は医者だ
すぐそこに家があるから、おいで」

女は、ひとりではなかった

連れて行かれた家で、布団に寝かされ


「労咳だね」



聞いてもいないのに、聞きたくない病名を告げられた



「まだ初期のようだから
薬をしっかり飲んで、体に無理をさせない!
いいね?」



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