綾の秘密の夏休み
「トントン」と音がして、ビクッと身体を震わせて扉の方を見ると、ガラス張りの扉の向こうに先ほどの少年が立っていた。


両腕にたくさんの本を抱えて、さらに手には紙コップを2つ持っている。


口をパクパクしているのでよく見ると、「開けて」と言っているようだった。


席を立って綾は恐る恐る扉に向かうと、少年は歯を見せてにかっと笑った。


「通じてよかったー。図書館て喋っちゃいけないみたいな雰囲気あるよね」


紙コップを置くと、少年は腕に抱えた本もドサドサテーブルに置いた。


「麦茶持ってきた」


紙コップに入っていたのは図書館のロビーで無料でもらえる麦茶。


綾が横目で本のタイトルを見ると、「鉱石図鑑」や「プロ野球名鑑」、「宇宙天文学」など図鑑ばかりだった。
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