綾の秘密の夏休み
「俺の夢はね」


綾は思わず身を乗り出してリョウの次の言葉に耳を傾けた。



「俺の夢…」



リョウがクルッと振り返って綾を見下ろした。


「わっかんね」


綾は思わず石からずり落ちそうになってしまった。


「これ!って夢になるとわかんねえなぁー」


リョウは再び眼下に広がる田舎町に視線を向ける。


「いっぱいあるな。やりたい事!」


綾はやりたい事って聞かれても思い浮かばない。


「まずは綾と餃子対決!」


「口がニンニク臭くなっちゃうよ」


「どっちがニンニク臭くなるか対決する?」


「最悪じゃん」


その日初めて、綾は声を出して笑った。


「絶対嫌だよ」


綾が笑うと


「俺も嫌だ」


と言ってリョウが爆笑した。


声を出して笑ったのなんて、いつぶりだろう。
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