綾の秘密の夏休み
リョウの二重まぶたの目はキラキラ綺麗で、黒い髪は窓の光にすけて毛先が金色に輝いて見えた。


「あーや」


綾の名前を呼ぶリョウの声が優しくて、綾はますます言葉につまる。



「…」


「言って」



口にしたいのに、声が出ない。
そんな自分のことをリョウが嫌いになるのではないかと思って、綾は息が苦しくなってくる。


「今日のメインイベントするよ」


綾の迷いはリョウの明るい声で払拭された。


「先に昨日のだせー名前神社で待っててよ。俺本返したらコンビニでカップラーメン買ってお湯入れて持ってくから」


泣きそうな顔の綾を気にしているのかしていないのか、リョウは「綾、先に行って」と笑顔で言った。


綾は言われるままに部屋を出ると、小走りで階段を駆け下りた。


エントランスを抜けて外に出ると、夏の暑さと蝉の声が綾にまとわりついてきた。


「リョウ」ってたった一言言うだけなのに。


そんなことも言えない自分が悔しくて情けなくて、綾はやっぱり自分のことが嫌いだと思った。
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