天秤に、隕石。
皿を摘む指先から、こつり、と音がした。
空から極彩色を放つ隕石のような物体が、物凄い速度で私に向かって落ちてくる。
落下地点にいるのが私だけだと気付く頃には、周りには誰もいなかった。横断歩道の信号が無意味に点滅している。
嗚呼、数分後か数時間後には、此処で潰れてしまうのか、案外怖くないものだな、と煙草に火をつけた。
記憶が蘇る。
男達は私を玩具として扱い、私もまた男達を玩具としか認識しなかった。
男に対しては、それ以上でも以下でもない。
女達は頼りない足どりで、か細い指をさし私を嘲笑っていた。
愉しげに笑った女達が綺麗で、醜くて、矛盾が可笑しくて、私も嘲笑った。
なんとなく、紡いだ、人生だった。
今更、死ぬことへの未練も、生命への執着もない。
最期に眺めたのが、この美しい空だなんて、まさしく冥土の土産だな、と、逸らさず眼に焼き付けた。
筈、だったのに。