天秤に、隕石。

ベッドに入ってから、男は無駄口を叩くことなく、私を抱いた。

鎖骨を舌で押される回数を、頭で静かに数えるのもやめた頃、嗚呼、こんなに都合のいい男が世の中にはいるものかと驚いた。

私の倍はあるであろう逞しい腕は、快楽と共に恐怖を呼び覚ましたけど、今此処で死ねるなら、それはそれで楽かと笑ってしまう。

訝しげに理由を問う男に、最期くらい、男という生き物を吐け口にしてやろうと、洗いざらい「話」をした。

男は馬鹿で、私も馬鹿で、人として絶望しているが、セックスは気持ちのよいものだろうという希望を持ちながらも、今後、生きる選択肢は無い。

「話」を聞きながらも、無駄に口を開かず、なおも行為を続ける男は、やはり男だけど、今私が欲しかったのは此れだから、本当に都合がいいと思った。

予定していた時間を過ぎた。

男はホテルの代金を支払い、私はこんな女に金を使わせてしまうことが申し訳なく謝った。

すると、男が云った。

次はいつ?と。
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