偽のモテ期にご注意を
「自宅の住所を聞いて、何となく分かってたけど、セレブなマンションね」

目の前の高層ビルを見上げて、思わずため息が出る。

高級ホテルのような入り口に、しり込みしそうになるのを何とか気合を入れなおし入っていく。

先にエントランスに行き、事情を話してコンシェルジュに手伝ってもらい、自宅まで連れて行く。

所々意識が戻ってくれるので、何とか寝室まで連れて行くことが出来、ホッとしたのも束の間。

「ちょっと待って!まだ寝ちゃダメよ。」

上質なスーツを着たままベッドに倒れこみそうになった置鮎を何とかベッドサイドに座らせて、上着を脱がし、薬を経口補水液で飲ませる。

そのまま布団に潜りそうになるのを何とか押し留めて、ベルトを外す。

「ちょっと失礼するわね」

そう言って、ネクタイを外し、シャツのボタンを上から順に鳩尾まで外し始める。

「なに・・を・・」

弱弱しい抵抗を無視してシャツの前を大きく開き、両脇に買ってきた熱さましのシートを貼って行く。

「ん!」

予想外に冷たかったらしく、眉を顰める。

「あぁ、ごめんなさい。後、首にも貼るから、もう少し我慢して」

そう言って、手早くシャツのボタンを留めながら、首の後ろにも貼ると、今度は眉を顰めるだけだった。

熱さましのシートを貼り終えたので、布団に潜りこませ、額にもシートを貼った後置鮎を見ると、ぼんやりとこちらを見ていた。

「水分補給と栄養補給、風邪薬。サイドテーブルに置いて置きますから、楽になったら適当に使って下さい」

説明しながら袋から取り出し、サイドテーブルに並べていく。

「じゃぁ、無理しないようにね。お大事に」

そう言って何か言おうとした置鮎を置いて寝室を後にした。
< 5 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop