19時、海風が頬を撫ぜる丘でさよならを。

「…ご出産、おめでとうございます。では、さようなら」
「あ、ああ、ありがとうねぇ。じゃ、お父様によろしくね」


会話を遮るように目線をそらして答えると、校長先生も少しは空気が読めるのか、そそくさと切り上げて廊下へ戻って行った。


「…ホラ、お父様によろしくね、だって。マジむかつく」
「やらしーお金で稼いで特別扱いの贅沢三昧だもんね。あ、こっち見てる、行こっ」


小さい声だけど、絶妙に聞こえるように言ってるボリューム。

やらしいとか、こっちの台詞だと思うけど、言い返せない。


そう。

父は医者。

それだけならきっとせいぜい金持ちとか軽いえこひいきとか、そんな程度ですんでいたと思う。