19時、海風が頬を撫ぜる丘でさよならを。
「何言ってるの。命を生み出す産婦人科の家族がバラバラなんておかしいでしょ。お父さんはね、ここに帰る家があるから頑張れるのよ」


…ですよね。


「それに、良い所じゃない。自然がいっぱいで、お野菜もお魚も美味しいし。お母さんは好きよ」
「私、学校でいじめられてるの。だから嫌い」
「まあ、どういうこと?」


なんだか引き下がれなくて、苛立ち紛れに今日あったことを話した。


「そうねぇ。今は嫌かもしれないけれど、特に男の子はそういうお年頃なのよ。もしかしたら祈梨のこと好きなのかも。ウフフ。女の子もちょっとやっかみ半分てところじゃないかしら? じきに収まるわよ」
「もういい」
「あ、ちょっと、祈梨?」

この人に吐き出して楽になるはずがないのに。

期待するんじゃなかった。
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