19時、海風が頬を撫ぜる丘でさよならを。
***
「おっ。いのりー、おかえりっ」
派手な金髪が手を振って叫んでいる。
来てたんだ。
なんだ、残念。死ねないや。
心の中でそう呟いたのだけど。
もっと奥のほうで全然違うことを考えてる自分に驚いた。
声が聞こえたその瞬間、私は声のするほうへ顔を上げた。
視界がパノラマみたいに広がって、木々の枝に茂る瑞々しい緑の葉たちが風にそよいでいるのがわかった。
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