19時、海風が頬を撫ぜる丘でさよならを。
鳥たちがさえずる声が聞こえた。

潮風と草木の匂いがふんわり香ってた。

その鮮やかな夏の景色の中に、彼がいたんだ。


そしたら。

ペダルが、急に軽くなった気がして、体がポカポカして。

暑いのは、夏だから当然なのだけど、そういうのじゃなくて。


「おかえり、って、家じゃないし」
「昨日ここで会ったんだから、またここで会ったらおかえりだろ?ははは」


妙な気持ちを悟られたくなくて、自転車を停めながらなんとなく悪態をついてしまった。

そんな私にお構いなしで不思議な持論を展開して笑う彼。


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