19時、海風が頬を撫ぜる丘でさよならを。
ここでお別れじゃないのは嬉しいけど、帰りたくないな。

そう思いながら家までの静かな夜のサイクリングに出発した。


純の自転車がぴったりついてくる。

私の自転車と音が重なる。

ペダルを漕ぐ音だったり、スピードが乗ってペダルを止めてる時のカラカラカラって車輪の音だったり。

その音と、心臓の音だけが夜道に響いている感じ。

もちろん、私の心臓の音は私だけにしか聞こえないけど。

家に着かないで、遠回りしようかな、そんなことまで考えた。


バカだ。

ちょっと優しくされて、ハグされて、期待してる?

やめやめ。
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