19時、海風が頬を撫ぜる丘でさよならを。
「最っ低!」

ある日、私は登校するなり川瀬さんから平手打ちを食らった。

そして川瀬さんの友達に突き飛ばされ、尻餅をついた。

今までのコソコソしたものではなくて、明らかな敵意が私に向けられているのがわかる。

その驚きで何も言えずにいたら、川瀬さんが涙を浮かべてまた叫んだ。

「この島から出ていけ!産婦人科なんぞここにはいらん!スケベ医者の娘と一緒に授業なんかできん!」

剥き出しの怒りは、どんな鋭利な刃物よりも深く私の胸を突き刺した。

なにがあったのかはわからなかった。

だけど、先生にバレないようにしていたのをこんな騒ぎにするくらい怒っている。

それだけは嫌でもわかる。
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