19時、海風が頬を撫ぜる丘でさよならを。
なにがあったのか、聞き出すことはしなかった。

だけどお節介な男子がニヤニヤと耳打ちしてきた。

川瀬の母さん、お前のお父様とフリンだってよ!

不倫?さすがに信じがたかったけれど、誤解なら解けるというものでもなく、誰からともなく囃し立てた。

「フ・リ・ン!フ・リ・ン!」
「それ!フ・リ・ン!フ・リ・ン!」
「フ・リ・ン!出・て・け!」
「出・て・け!出・て・け!」

教室中にこだまする声に、耳を塞ぐ。

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