19時、海風が頬を撫ぜる丘でさよならを。

まるで悲恋の心中。

自分でもバカじゃないかと思うけど、悲劇のヒロインみたいだなんて思って、浸ってしまった。


「だから死ぬ前に、俺とデートしない?」
「へっ?」


そんなふうに重く暗い空気に浸ってたら、純がその空気をとびっきりの弾む声で払い去った。


デート?


死ぬ前に?


「俺、この島から一度も出ないまま死ぬのはさすがにアレかなーって。だから本土で一日遊んで、またここに戻ってこようぜ!なっ?」


死ぬというにはあまりにも清々しい顔で言う純のその提案に、私は困惑した。


不真面目なの?


実は冗談なの?


だけど…

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