愛しのメガネちゃん
心の中では『もうこれ以上何も聞くな、美香子の過去に触れてやるな』と自分自身に訴えているのに、口が勝手に動いてしまう。
俺も美香子の悲しい…でも、忘れない大切に閉まってある過去なんて聞きたくない。
でもやっぱり心のどこかで、美香子の過去を知りたい全てを知りたいって思っているんだ。
だからこんな言葉が、口から出てきたんだ───
「そんなに…簡単に忘れられないほど、元カレのこと好きだったんだ?」
美香子は一瞬見開いた瞼を伏せて「…うん」と笑った。
なんで笑うんだよ…
悲しいんじゃねぇのかよ…
なんで、『悲しい』って『寂しい』って泣かねぇんだよ…
俺はそんな偽りの笑顔なんかを見たいんじゃねぇよ…
俺にぶつけるには、その過去は大きすぎるのか?俺じゃあ美香子を支えられないのか?
「…美香子にそんな悲しい顔させるヤツのことがそんなに好きなのか?」
気付いたら酷いことを言っていた。
大きく見開かれた美香子の瞳には、うっすらと涙が滲んでいた。
そして、泣きそうな顔で「うん」と笑った。
「─っ、笑うなよっ!!悲しいのに何で笑うんだよ!!」