愛しのメガネちゃん
別に俺は、人の逢瀬を覗き見るような悪趣味なことが好きな訳ではない。ただ勝矢のそういうシーンによく出くわしてしまうだけだ。
休み時間に『浮気はするな』とあれだけ遠回しに忠告しておいたのに、この始末だ。だから最初、めぐみがコイツと付き合うと言った時反対したのに…
ありえない、最悪っ…
とにかく、勝矢の“浮気”を止めさせなければ!!
保健室の奥にある四台のうち唯一カーテンが閉まっているベットのそばに行き、カーテンを開けずにベットの脚を強めに蹴る俺は本当に優しいと思う。
「きゃぁっ」
そして、案の定聞こえる『咲』の小さな悲鳴と勝矢の小さなため息。
「…悠太ぁ、お前もっと気利かせられないわけ?」
いつものことなので慣れっこな勝矢は、詫びろうともせずに俺に愚痴をこぼす。
「…まじでめぐみに言うよ?」
俺の呆れた声に、さすがにそれ以上何も言ってこなかった。