愛しのメガネちゃん
これは義理の妹の初体験を知りたいという好奇心からという訳ではなく、一人の大人として中学生に聞いた。三年前もアタシは未熟ながらも一教師だったから。
疑問をぶつけると美香子ちゃんは顔を真っ赤に染めて、首を横に振った。
『渉は大切にしてくれるから』
と付け足して恥ずかしくなつたのか勢い良くうつむいた。
それからすぐだった。渉くんが亡くなったのは…
「…交通事故だったの」
「アタシも何度か渉くんには会ったことがあったんだけど、渉くん…本当に優しい子だったの」
ぽつりぽつりと先生の悲しそうな声が、三人しか居ない保健室に響く。
「漫画やドラマの世界だけって思っていたけど、本当にあったんだ…」
「ボール追いかけて周りが見えなくなった男の子を車かばったの───」