愛しのメガネちゃん
「…先生、俺は力不足かな…」
振り絞ったような俺の声に、先生はそれまで臥せていた顔を上げた。
「櫻井くん?」
「俺は…美香子を好きになったらダメなのかな」
「…悠太」
それまで黙っていた勝矢の心配そうな声が聞こえた。
「櫻井くん、好きって気持ちは誰かに決められるものじゃないでしょう。ただ、櫻井くんが好きになった子の中に忘れられない人がいるだけ…」
それまで膝の上で握り締めていた拳から目を離し、諭すような口調の先生に向けた。
「美香子ちゃんも、いつかは前に進まないといけないのよ?」