愛しのメガネちゃん



屋上に続く最後の階段を三段跳ばしで、勢いよく駆け上がる。



バタンッ──



重い屋上の扉の先には、美香子を見当たらなかった。足早に屋上に出て、辺りを見回す。



風が俺の肌を撫でていく。


その風は甘い花のような香りがした。ちょうど、いつも美香子が付けている名前も知らない香水の匂いと一緒だった。



風が吹いた方を勢いよく振り替えると、驚いた様子の美香子が身体を柵に預けたまま顔だけこちらに向けていた。



「…悠太くん」



美香子が、小さく俺の名前を呟いたのが分かった。



一瞬見つめ合って、目を反らした美香子。



やっぱり嫌いになった?俺のこと…。決意が揺らぎそうになる。



一つ深呼吸をして、美香子の傍まで一歩ずつ歩みを進める。



俯いている美香子の傍まで、凄く遠い気がした。時間も凄くゆっくり流れていて、美香子の所までたどり着けないんじゃないか?なんても思った。



やっと着いた時には、なんだか顔を上げられなくて…沈黙が流れた。



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