水性のピリオド.
むき出しのカンマ
◇
「先輩、なにアレ。おれ絶対イヤですからね」
まさか、家にまで来るとは思わなかった。
パパとママ、妹と弟、それからチワワのサスケもいるのに、こんな夜中に訪ねてくるなんて。
平日のど真ん中。
水曜日になって二時間とちょっと経ってる。
せめて、あと七時間くらい経ってから来てくれたらよかったのに。
そうしたら、パパもママも、杏ちゃんも叶人くんも、みんな『おはよう、春くん』って笑顔で迎えてくれたはずだよ。
インターホンを鳴らさなかったのはえらい、けど、褒めてあげない。
突然電話をかけてきて、今家の前にいます、なんてメッセージを残されたら、見に出ないわけにもいかなかった。
パパ、ママ、杏ちゃんと叶人くんは寝てるけど、廊下を歩く音でサスケは起きてきちゃったよ。
夜道に飛んでいかないように、サスケを抱き上げる。
ぶんぶん振り回す短い尻尾が半袖のシャツから伸びたわたしの腕を往復ビンタ。
いたいからやめてってサスケに話しかけたら、はるが怒った顔をした。
黙ったまま見つめ合っていないで、はるが本当に家に来たんだってことは確認できたし、さっさとドアを閉めたいんだけど、むり。
はるの左足がドアを押さえてるから。
ぐぐぐっと無理やり引っ張ろうとしてみたら、左手を追加された。
これはもうお手上げだ。望みを言いたまえ。
あ、そういえばさっき言ってたか。
望みというか、文句というか、なんなんだろう。