水性のピリオド.
はる。こいつは、よく泣く。ほんとうに、よく泣く。
出会ったころの顔を思い出そうとすると、泣き顔しか浮かばない。
かっこいい、よりも可愛いって思う。
でかい図体だし、力は強いし、言動は可愛いけど、顔は全然可愛くない。
肌に突き刺さってピンと立つほどの剛毛。もみあげのところはふさふさしてる。でもやっぱり、タワシみたいにかたい。
ぱっちり二重の目、羨ましくなるくらい整った鼻筋、薄いけど中心はぷっくらとしたくちびる。
綺麗な肌をしているけど、かなりの頻度でニキビをこしらえてくる。
カミソリ負けしたって言いながら見せてくるフェイスラインには、そのたびに赤くポツポツと傷がある。
可愛いけど、そんなズボラはモデルにはなれない。
俳優にもなれない。大根だから。
画面の向こう側にはるが行ってしまうことは、ないんだろうな。
たとえば隣に寄り添って歩いていたってスクープにはならないし、バパラッチに追いかけられることもない。
まるで世界から逃げるように、世界の、地球の上を走り回ってみたいって思うけど、近くの公園でランニングが精一杯だ。
贅沢がほしいわけじゃない。
ほどよい幸せ、そしてたまに不幸せは、はるのそばにいたら自ずと手に入る。
はるからしてみたら、到底理解はできないんだろう。
わたしも、自分のことだけど、ちょっと意味わかんないから。
好きだから、はると付き合ってた。
まだ 別れよう の返事をもらっていないから、付き合ってる。