水性のピリオド.
はじめてがこわい、そんなセリフを付き合うかどうするかの段階で口にするような子、たぶんどこにもいない。
もしいたら、わたしと友だちになってほしい。
好きな人と付き合うのって、こわかったんだ。
だから、別に好きでもなんでもない人と、はじめてのお付き合いも、はじめてのキスも、はじめての一区切りも済ませた。
たぶん、はるがはじめての彼氏だったら、何もかも上手くいかなかった。
告白された時点で、わたしも好きだけどごめんねって言ってたと思う。
わたし、おかしいからさ。
はるが好きだって気付いていたくせに、べつの人を求めた。
ほしかったわけじゃないけど、はるに行き着くためには通らないといけない人だった。
わたしのはじめてを網羅した人。
さすがに名前は忘れない。
イワイくん。他校の先輩。今はどうしてるかな。
好きな人の胸の中にいて、別の男の人のことを考える。
もう連絡先も消したし、考えたってそこで止まるんだけど。
「はるー? ねえ、なんでもしてあげるから別れようよ」
「なにもしなくていいから別れないでください」
そうだよね。やっぱり、そう言うよね。
どうしたらいいんだろう。この駄々っ子。
首根っこを引っ掴んで放り投げてやりたいけど、まあ、無理だ。
「潮時だと思うんだよね……」
わたしよりずっと年上の人には『なにを生意気に』って言われそう。
潮時。シオドキ。
なにをもってして、そのときだって言ってるんだろう。
自分でもわからないや。
適当な言葉が見当たらなくて、手に触れた言葉を片っ端からぽいぽい投げてたら、どれかがはるの溜飲を下げるかもしれない。
そもそも、不満なのか怒っているのか悲しんでいるのか、いまいち見えないんだけど、泣いてるってことは悲しいのかな。
はるは、よく泣くから、ぜんぜんわからない。
わからないもの同士、自分のことくらいはちゃんとわかっていたいよね。
はる、わかってる?
自分のなかにあるもののどれがはるをそんなに泣かせているのか。
わたしは、わからない。
どうして別れようなんて言ったのか、わからない。
だけど、それを訂正する気はないんだ。
今この瞬間も、はると別れたいって思ってる。