魔法使いになりたいか
§9
草むらが、がそごそと動いたけど、導師じゃなかった。
結局、日が傾き始めるくらいまで探したけど、導師は見つからなくて、あきらめて家に帰った。
そこには、導師と菜々子ちゃんが待っていた。
「あれ! ずっと探してたのに、なんだよ」
「それはこっちのセリフよ!」
菜々子ちゃんは、やっぱり勉強していた。
学校から借りてきた辞書を、もう一人で引けるようになっている。
彼女が上がり込んで勉強していたら、お客さんが何人か来て、レジうちまでしてくれたらしい。
そしたら導師が帰ってきて、二人でお留守番してたんだって。
菜々子ちゃんは、めちゃくちゃ怒っている。
「どこほっつき歩いてたのよ、お店もほったらかして!」
「導師を探してたんだよ」
「あんた、まともに働こうとか、仕事する気あんの?」
「だって、導師がいなくなったんだもん」
怒る菜々子ちゃんと、余裕の導師。
「すまない、つい懐かしい顔を見かけたもんでな」
「あの白い猫、知り合いなの?」
そうだ、と、導師は答え、菜々子ちゃんは、違う、と言う。
「古い仲間だ」
「今日初めて会ったの」
彼女の言葉に、導師が反応する。
「なに? どこで会った?」
「導師と一緒に虫取りの訓練してた、河原だよ」
「そんなこと普段してんの? すごく大きくて真っ白な、綺麗な猫だったから、パン食べるかなーと思ってあげたけど、食べなかった」
それを聞いた導師は、猫猛ダッシュで外に飛び出していく。
「あ、ちょっと導師?」
ため息をついた俺に、菜々子ちゃんが言った。
「あの白猫と導師、お友達なのかな」
「古い知り合いなんだって」
「ふ~ん」
今日の修行だって、全然出来なかった。
てゆーか、まともに修行が出来た事なんて一回もない。
虫取りしたり、町の縄張りを探検したり、ひなたぼっこしてたり。
魔法使いの修行って、もっとなにか、違うもんじゃないのか?
「ねぇ」
菜々子ちゃんが言った。
「あんた、猫としゃべれるの?」
導師から、北沢くんにはしゃべっちゃダメっていう話しは聞いていたけれど、菜々子ちゃんに対してどうだったかは、聞いていない。
菜々子ちゃんの、もしかしたら未来がかかっているかもしれないことを、俺が判断するわけにはいかない。
「いや、どうだろ」
かといって、嘘もつきたくないから、適当にごまかしたつもり。
「ふ~ん、ま、どうでもいいけど」
思いっきり冷めた視線で彼女はそう言ってから、また勉強を始めた。
次の日になっても、導師は帰ってこなかった。
俺は、少し腹を立てている。
何度も確認して、魔法使いになる気はあるのかと言っておきながら、いざ始まったらこのザマだ。
本当にやる気がないのは、どっちだ。
結局、日が傾き始めるくらいまで探したけど、導師は見つからなくて、あきらめて家に帰った。
そこには、導師と菜々子ちゃんが待っていた。
「あれ! ずっと探してたのに、なんだよ」
「それはこっちのセリフよ!」
菜々子ちゃんは、やっぱり勉強していた。
学校から借りてきた辞書を、もう一人で引けるようになっている。
彼女が上がり込んで勉強していたら、お客さんが何人か来て、レジうちまでしてくれたらしい。
そしたら導師が帰ってきて、二人でお留守番してたんだって。
菜々子ちゃんは、めちゃくちゃ怒っている。
「どこほっつき歩いてたのよ、お店もほったらかして!」
「導師を探してたんだよ」
「あんた、まともに働こうとか、仕事する気あんの?」
「だって、導師がいなくなったんだもん」
怒る菜々子ちゃんと、余裕の導師。
「すまない、つい懐かしい顔を見かけたもんでな」
「あの白い猫、知り合いなの?」
そうだ、と、導師は答え、菜々子ちゃんは、違う、と言う。
「古い仲間だ」
「今日初めて会ったの」
彼女の言葉に、導師が反応する。
「なに? どこで会った?」
「導師と一緒に虫取りの訓練してた、河原だよ」
「そんなこと普段してんの? すごく大きくて真っ白な、綺麗な猫だったから、パン食べるかなーと思ってあげたけど、食べなかった」
それを聞いた導師は、猫猛ダッシュで外に飛び出していく。
「あ、ちょっと導師?」
ため息をついた俺に、菜々子ちゃんが言った。
「あの白猫と導師、お友達なのかな」
「古い知り合いなんだって」
「ふ~ん」
今日の修行だって、全然出来なかった。
てゆーか、まともに修行が出来た事なんて一回もない。
虫取りしたり、町の縄張りを探検したり、ひなたぼっこしてたり。
魔法使いの修行って、もっとなにか、違うもんじゃないのか?
「ねぇ」
菜々子ちゃんが言った。
「あんた、猫としゃべれるの?」
導師から、北沢くんにはしゃべっちゃダメっていう話しは聞いていたけれど、菜々子ちゃんに対してどうだったかは、聞いていない。
菜々子ちゃんの、もしかしたら未来がかかっているかもしれないことを、俺が判断するわけにはいかない。
「いや、どうだろ」
かといって、嘘もつきたくないから、適当にごまかしたつもり。
「ふ~ん、ま、どうでもいいけど」
思いっきり冷めた視線で彼女はそう言ってから、また勉強を始めた。
次の日になっても、導師は帰ってこなかった。
俺は、少し腹を立てている。
何度も確認して、魔法使いになる気はあるのかと言っておきながら、いざ始まったらこのザマだ。
本当にやる気がないのは、どっちだ。