ただずっと、君が好き
呼び止めたのはいいけど、何を言えばいいのかわからない。


ただ、あのときみたいに一方的に別れを告げられて、忘れてと言われても、同じことの繰り返しで、きっと忘れることができない。


このまま、勝手に終わらせられてたまるか。


「私の話も、聞いて」


もっともらしいことを言ってるけど、話すことなんて思いついてない。
今、天形に自分の気持ちを伝える勇気だって、まだない。


でも、今告白する必要はない。
とにかく、天形と無関係にならなければいい。


私は軽く深呼吸をする。


「私たち、友達になれない、かな」


この提案をすることすら、私は怖かった。
聖と付き合うことを勧められて、自分のことは忘れてくれって言われたのに、友達になりたいだなんて、頭がおかしいとしか思えない。


それに、友達に戻りたいと別れを告げられて、私たちは友達以下の関係になってしまった。


友達に、なれるはずない。


だから、天形の答えを聞きたくなかった。
どこまでも、何もかもが、今の私には怖くて仕方ない。


強く目を瞑って返事を待つ。


「……わかった。気が向いたら、また連絡する」


その言葉で一気に全身の力が抜けた。
私は目を開けて、天形の顔を見ようとしたけど、もう帰ろうとしていた。


「ありがとう。またね」


天形の背中に手を振ることができる、またねと言える喜びを噛み締めながら、一日を終えた。
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