ただずっと、君が好き
沙奈ちゃんは今にも怒りだしそうな夏希に向けて、若干萎れ始めているバラを見せる。


「プレゼント」


語尾に音符でもついているんじゃないかってくらい、楽しそうに言った。
夏希は黙ってそのバラを握り潰す。


「あっ……」


多分わざとだろうけど、沙奈ちゃんが悲しそうな声を出したというのに、夏希は容赦なくゴミ箱に捨てた。


「どこ行く?」


なにもなかったかのような涼しい笑顔を見せる。
夏希らしい行動に、私は笑ってしまう。


「あー、ちょっと。私がいじめられたのに笑うなんてひどーい」
「ご、ごめん」


冗談でのやり取りで、笑いながら答えた。


そして私たちは近くのショッピングモールに移動した。


「私、本屋行きたいな」
「私もー」


私が提案すると、沙奈ちゃんが手を挙げた。
夏希は驚いた顔をして沙奈ちゃんを見る。


「沙奈が……本屋?」
「え、ダメ?好きな漫画の新刊が出たから買いたいんだけど」
「ああ、なんだ」


聖と接しているときみたいに、遠慮がない。
失礼な態度の連続だ。


二人こそ知り合って間もないはずなのに、本当に仲良くなってるよなあ。


「ひなただって、漫画買うよね?」
「買うけど、今日は小説見たくて」


私たちは話しながら本屋に着いた。
それぞれ目的の場所に散らばる。
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