ただずっと、君が好き
沙奈ちゃんのときみたいに厳しく言われてしまうのではないかと、身構えてしまう。
それだけ自分が無責任で変なことを言っているのは自覚している。


だけど、夏希は何かを言うよりも先に私の頬をつねった。


「人の話を、聞け」


すぐに手を離してくれたけど、地味に痛い。


「今回は聖の暴走。ひなたがそこまで悩む必要はないの。ひなたが願うほうに、真っ直ぐ進めばいい。聖が落ち込んでいたら、私が怒っておくから」


頼もしい。
それと同時に、少し気が楽になった。


夏希が言うことを鵜呑みにしたかと言われると、また違うような気がするけど。


「聖だって、ひなたが天形のことをずっと好きなことも、簡単に諦められないこともわかってる。だからいいんだよ。やっぱりお前なんかいらないって言っても」
「そこまで言ってないよ……」


夏希は残念そうに唇を尖らせる。
それがなんだかおかしくて、思わず表情が緩んだ。


「話を聞いてくれてありがとう、夏希。また報告しにくるね」
「聖にとって悪い知らせならいつでも待ってるよ」


冗談だとわかっているけど、夏希は満面の笑みだった。


家族が望むようなことじゃないのに、夏希が言うとなぜか笑ってしまう。


そして私たちは別れ、家に帰った。
< 94 / 156 >

この作品をシェア

pagetop